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サッちゃん サッちゃんはね サチコって いうんだ ほんとはね だけど ちっちゃいから じぶんのこと サッちゃんて よぶんだよ おかしいな サッちゃん サッちゃんはね バナナが だいすき ほんとだよ だけど ちっちゃいから バナナを はんぶんしか たべられないの かわいそうね サッちゃん サッちゃんがね とおくへ いっちゃうって ほんとかな だけど ちっちゃいから ぼくのこと わすれてしまうだろ さびしいな サッちゃん 熊にまたがり 熊にまたがり屁をこけば りんどうの花散りゆけり 熊にまたがり空見れば おれはアホかと思わるる
一つのメルヘン 秋の夜は、はるかの彼方に、 小石ばかりの、河原があつて、 それに陽は、さらさらと さらさらと射しているのでありました。 陽といっても、まるでけいせき硅石か何かのやうで、 非常な個体の粉末のやうで、 さればこそ、さらさらと かすかな音を立ててもゐるのでした。 さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、 淡い、それでゐてくつきりとした 影を落としてゐるのでした。 やがてその蝶が見えなくなると、いつのまにか、 今迄流れてゐなかつた川床に、水は さらさらと、さらさらと流れているのでありました……
浴後 裸で向き合って 私は あーあ、と云った。 あなたも 私を見て あーあ、と云った。 私の手があなたを撫ぜて アッ、アッ、と云い あなたの手が私に触れて アッ、アッ、と云い お互いをみつめ合い よだれを垂らし… どっちも 生まれて八ヶ月 未刊詩集「続・掌の上の灰」より 夫婦 四十五歳のお前が 空を見ていた 頬杖をついて ぽかんと 空を見ていた 空には 鳥もなく 虹もなかった 何もなかった 空には 空色だけがあった ぽかんと お前は 空を見ていた 頬杖をついて それを 私が見ていた。 抄詩篇より あーあ 最後に あーあというて人は死ぬ 生まれたときも あーあというた いろいろなことを覚えて 長いこと人はかけずりまわる それから死ぬ わたしも死ぬときは あーあというであろう あんまりなんにもしなかったので はずかしそうに あーあというであろう。 「動物園の珍しい動物」より